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COLUMN
連載

鈴木尚広が行く~台湾での臨時コーチ体験~

第2回 台湾での雨に教えてもらったこと

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雨の日が続きました


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写真1 高架下での練習です


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写真2 打撃練習場です


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施設はすべて借りるので大変です

 こんにちは、鈴木尚広です。

 「崇越ファルコンズ」のチームでコーチとして動き出して10日ほど経ちます。土日が休養日となり、6日の月曜日から再び指導をしていますが、あいにくの雨で外のグラウンドでは練習ができない日々が続いています。

 プロ選手としてやってきた僕は、雨が降るとつい「ラッキー」と思ったりしちゃうんですよね。屋外球場での開催だと試合がなくなったりして、思いがけない「休養日」になりますから、つい、そういう気持ちになるんです。実は月曜日も滞在ホテルの窓から雨が降っていることを確認して、ちょっと「ラッキー」って思ったりしてました。

 そして向かった練習場。なんとも表現しがたい思いに襲われました。「なんだ、これ?」って言葉が一番しっくりきますかね。僕のプロ野球20年間、いや、もっとさかのぼって、高校時代でも、雨が降れば普通に設備の整った室内練習場での練習が始まります。でも、ここは違いました。

 高速道路の高架下、そこが練習場に早変わりです。雨をしのいでいるだけ、という感じの空き地みたいな場所(写真1)ですね。投手たちはそこで投球練習も行います。でもそこは「マウンド」と呼ぶには程遠い、言ってしまえば「砂場」みたいなところです。打撃練習はというと、打撃ゲージだけの、バッティングセンターみたいなところ(写真2)です。ここも借りる施設ですから、他の人たちが使っていたら、使えません。

 僕にとっての「当たり前」は彼らにとっては「当たり前」には存在していないんだなあ、と感じました。僕の野球人生には常に室内練習場がありましたから、室内でも外で行うのと同じような練習が可能でした。でも、ここは違います。雨が、彼らの野球の練習内容を大きく左右するのです。

 それでも選手たちは、一人としてこの環境を「最悪」と思っている様子はありません。もちろん、設備の整った環境での経験がないという部があるかもしれませんが、それよりもどんな条件の中でも、きちっと対応しているという感じです。与えられた環境で、自分のやるべきことをやる。これって、例えばミスをしても人のせいにしない、何かのせいにせずに自分で責任を負う、という考え方に直結するような気がしますね。

 こういう環境でも野球をやる。彼らは本当に野球が好きなんだなあと感じます。僕も野球が好き。でもそんな純粋な気持ちを、彼らの雨の中の練習で改めて思い出させてもらった気がします。雨の練習もそうですが、通常の練習でも、たとえばマネージャー業をしている人がウォーミングアップを先導していたりします。トレーニングコーチがいないのです。トレーナーもたった1人。これでは、マッサージだって簡単には受けられません。各分野それぞれの担当コーチというか、プロフェッショナルな人がいるわけじゃないんです。僕の「当たり前」が存在しない世界で、野球を続ける彼ら・・・ハングリー精神も身に付きますよね。

 朝起きて「雨だ!ラッキー!」と思った自分はホントに、あつかましいです。笑

 首脳陣と選手の間の「壁」がないようにも、感じています。選手が首脳陣と対等に話している姿をしばしば見ています。首脳陣も決して選手を怒ったり、責めたりしない。選手たちは遠慮なくコーチに声をかける。これって、僕のこれまでの野球人生では・・・考えられないですね。

 この台湾のチームの在り方がいいのか悪いのかはわかりません。のびのびプレーするにはいいのかもしれませんが、厳しさが足りない気もします。ただ、こういうコミュニケーションが見られるのは、僕にとっては新鮮なんです。自分がどういう指導者になりたいのかというものが、まだぼやっとはしていますけど、なんとなく見えてきたような気がします。ただ一つ言えるのは、選手たちに踏み込んでいこう、常に前向きにさせたい、という感じですかね。

 というわけで、僕は一歩踏み込んで、外野手の選手たちをご飯に誘ってみました。「飲みゅにけーしょん」尚広版、です。通訳の方はいないのですが、巨人時代のチームメイトだった姜建銘(ジャン・チェンミン)が、通訳として参加してくれました。ジャンは巨人時代は投手でしたが、この社会人チームに所属し始めた5年前から内野手です。それでも外野手会に参加してもらいました。僕はほぼボディーランゲージですけど、それでも通じ合える部分は多々あります。でもコーチというより、友だちって感じですかね。

 帰国までの日々、これからも彼らがどんな風に変わっていくのか楽しみです。また、お伝えします。

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飲みゅにけーしょんのはじまり!


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楽しい時間でした

 昨年限りで現役を引退した巨人軍OBの鈴木尚広さんが、3月1日から3週間に渡って台湾の社会人野球チーム「崇越」で、臨時の守備走塁コーチを務めることになりました。「鈴木尚広が行く~台湾での臨時コーチ体験~」と題して、尚広さんのコーチとしての奮闘をコラムで数回にわたってご紹介します。