閑話球題
2010.03.15
5個のスーツケース
石川遼選手をひと言で特徴づければ、「攻めのゴルフ」ということだろう。去年NHKでやっていた特集でも、18歳賞金王の秘訣はボギーを恐れずバーディーを狙っていくプレースタイルにある、と強調していた。それ自体はありきたりな分析だったが、「へぇー」と思ったのは所属用具メーカーの担当者の話だ。ツアーのたびに遼くんは、大型スーツケースを5個も持参するというのである。
ラウンドごとにウェアを替えるゴルファーの中でも遼くんは徹底している。シャツ、パンツ、サンバイザーからシューズやベルトまで、同系でコーディネートした一式を、その日の気分に応じて身につける。だから、どんな気分にも対応できるよう、大型スーツケース5個分の、何種類もの衣類が必要なのだという。
モデルじゃあるまいし、などと言うなかれ。「僕たちは常に見られている存在ですから」と、それが遼くんのプロ哲学である。彼の場合は「見られている以上積極的に見せよう」だが、見え方が色々な意味で大事というのはプロ選手なら誰にも当てはまることだ。
昨年のクライマックスシリーズだったか、ベンチに戻った先発投手に原監督が何やら注意している場面がテレビに映っていた。そばにいた人間に後で聞くと、「先発というのはゲームの主人公だぞ。首をひねったりガックリしたり、そういうところを見せるんじゃない」と叱っていたという。「敵・味方・ファンみんなに見られている」のを忘れるな、ということだろう。
以前、12球団がテレビ局の野球担当者の意見を聞く会を開いた時、テレビ側から出たことの1つに「出塁した塁上で相手野手となれなれしく話すのはやめてほしい」というのがあった。真剣勝負のはずなのにシラけてしまうと。これなども、「見られている」側は見え方に気づいていないに違いない。
最近の中継カメラは、ベンチ内もしっかりと追っている。降板を命じられたピッチャーがベンチでグラブを投げつけたりする姿などは、見せられる方も決して気分のいいものではない。
プレーを離れた時の自分たちが視聴者にはどう映っているか。選手自身がたまにビデオでチェックしてみるのも、意味のないことではない。