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2011年12月

チーム

2011.12.31

【連載・セカンドルーキー】(5)吉武真太郎・スカウト

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記録やデータを整理にも余念がない


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タフな体と抜群の制球力で活躍した

 大観衆の注目を一身に集め、あどけなさが残る球児が白球を指先で弾くと、回転のいい球がミットに吸い込まれた。思わず、ストップウォッチを持つ手が震えた。この球児が東京ドームで投げる姿を想像するとゾクゾクした。気温40度に迫る真夏の甲子園。汗を滴らせながら、スコアをつける。4試合ある日は12時間近く太陽にさらされるが、可能性を秘めた原石を見つけると疲れも暑さも忘れた。

 スカウト1年目の今年、先輩スカウトについて関東を中心に約200試合に足を運んだ。春先に買ったバッグは日に焼け、黒から紫に変色。パソコン、座布団、ビデオカメラ、スピードガンなど七つ道具の重さで、取っ手の付け根はほつれていた。

 大分の県立高校出身で、2年秋に脇腹を痛め、3年の公式戦登板はなし。ドラフトで指名されるとは夢にも思わず、当日は帰宅途中に、学校から追いかけてきた監督から指名を知らされた。当時の夢は、教員。断ることも考えたが、祖父母が「おまえがブラウン管の中に映っている姿がみたい」。この一言に背中を押されて歩み始めたプロ生活は15年にも及んだ。

 09年に引退して、昨年は打撃投手を務めたが、「(スカウトに転身した)今年が社会人1年目」。冠婚葬祭の時にしか着なかったスーツを、紳士服量販店で2着新調した。敬語の使い方から、名刺の渡し方などのビジネスマナーなど戸惑うことばかり。「目上の監督に、少しでも失礼があってはならない」と長かった髪も短くした。高校を卒業して18年がたち、社会の波に再びもまれていると感じる。

 今年1年は、雨の日も風の日も、惚れた「恋人」のプレーを見逃すまいと練習場に足を運んだ。甲子園の大会期間中は午前6時から球場前に並び、バックネット裏に、先輩スカウト部員が座る席を確保。手ぬぐいで椅子を拭くところから1日が始まり、試合中は、お目当ての選手の動きを細かに観察するとともに、ストップウォッチで一塁への到達タイムや、クイックの速度を計測。プロ向きの性格か、否か。一瞬の表情、しぐさも見逃さないように、緊張の糸を張る。長時間にわたって座り続けるため、足がむくんでエコノミークラス症候群のようになることもあったが、「先輩スカウトの見ることへの執念を感じたし、自分を見出してくれたスカウトが、ここまで努力してプロに導いてくれたのだと改めて感謝した」。

 スカウト2年目の来年からは自分だけの担当地域を持つ。自分しか見られない選手もいて責任は重いが、無名に近かった自分のような原石を探したい。そして、「この世界に来てよかった」と思ってユニホームを脱いでほしい。ピンチで抑えた時に感じる、毛穴からアドレナリンが出るようなたかぶりは何より心地よかったし、大分の小さな町にいた自分に、プロ野球が大きな世界を教えてくれた。

 プロの世界は厳しく、結果を残せず、プロになったことを後悔して引退する選手もいる。「指名によって、選手の人生を変えてしまうから、人生に責任を持つぐらいの覚悟で見極めたい」。自分の眼力にかかる責任を感じるからこそ、なるべく足を運んで選手の色々な顔を見る。来年はどんな「恋人」に会えるのだろうか。今から胸のたかぶりを抑えられないでいる。
(広報部 小池武士)

◆吉武 真太郎(よしたけ・しんたろう)◆
1975年6月3日生(36歳)
国東高―ダイエー・ソフトバンク(1994~2006年)―巨人(07~08年)
319試合登板、30勝、41敗、5S、52H、防御率3.81

【連載・セカンドルーキー】は5回目の今回で終了です。バックナンバーはこちら