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COLUMN
連載

鈴木尚広が行く~台湾での臨時コーチ体験~

最終回 初めてのコーチ業が教えてくれたこと

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崇越ファルコンズのみんなと

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走塁についてレクチャー中


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気付いたことはメモで残しました


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姜建銘(ジャン・チェンミン)にたくさん助けられました


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無事に帰国しました

 こんにちは、鈴木尚広です。

 台湾の社会人野球チーム「崇越」の臨時コーチ業を終え、帰国しました。

 行く前はやはり不安ばかりだったのですが、終わってみるとこの3週間はあっという間で、チームを離れた寂しさすら感じます。

 短い間でしたが、「崇越」の選手たちは目に見える成長を見せてくれました。公式戦となる春季大会、台東で行われた4試合を見ても、僕がそれまでに伝えたかったことが伝わっていた、と感じました。

 走塁をするメンバーも、打順のような“格”があると僕は思うんです。走塁でいうところの「クリーンアップ」は、足が速い選手。当然走れる、と思われている選手たちです。そしていわゆる「下位打線」などそれ以外は、脚力があるとは思われていない選手たちですね。「クリーンアップ」の選手たちは、バッテリーとの真っ向勝負しかありません。警戒される中で、どう盗塁を決めるか、の戦いです。

 一方、「クリーンアップ以外」の選手たちは、勝負の仕方が違ってきます。「クリーンアップ」の選手も当然することですが、さらに相手のミスを自分のプラスに変えることが重要になります。警戒されない中で、配球を読んで走るタイミングをうかがったり、パスボールなど相手のミスを逃さないなど、スキを突きます。

 僕は「次の塁を狙うということに、足の速い遅いは関係ない。野球はミスをするスポーツ。その一瞬のスキを突くことが走塁の大事なポイント」と言ってきました。それを、選手たちが実践してくれたと思えました。

 コーチとして臨んだ試合、すべての試合で気付いたことをメモ書きしました。試合後、円陣を組んだミーティングでは、僕が話をする時間も設けていただいていたので、そこで思いの丈を語りました。褒めてあげるところは、きっちり褒めてあげる。でも、もっと大事なことは、ダメだった時に何がダメだったのかを教えてあげること。説明する責任がコーチにはあると思うのです。

 いい走塁を褒めてあげた時、選手がうれしそうな顔をしてたんですよね。やっぱり、評価された時は、うれしいんですよ。気付いたことを言ってあげるのもコーチングだな、と実感しました。言ってあげることで、それまで「俺は足が遅いからいいや」なんて思っていた選手たちにも、走塁についての意識、興味を持たせられるんですから。

 大事なのはコミュニケーション。意識付けをさせるためのコミュニケーションです。台湾という初めての土地でコーチをすることになり、言葉もまともに話せずに、ボディーランゲージでの対話となりましたが、彼らは走塁に対する僕の伝えたいものをピックアップしてくれました。僕自身も積極的に行きましたが、彼らも僕に近づいてくれたことによって実現したこのコミュニケーション。こういうことができるのも、コーチとして必要なスキルだと勉強になりました。

 野球では「走攻守」って言葉を使いますよね。どこに重きを置くか、という部分はあるとは思いますが、やはり「走」を無下にはできないんですよ。脚力の衰えは、選手生命の危機にも確実につながると思います。走れることは、自分のコンディションを保てること、と僕は思っているんです。

 長いシーズンを戦う上で、走塁の力というのはジワジワとチームの戦力になります。塁に出たら何をしてくるかわからない、という選手を一人でも多く作れば、相手には相当なプレッシャーになります。マウンド上の投手に少しでも考えさせ、気持ちよく投げさせないことにつながるからです。成績のように数字には残らなくても、試合の雰囲気を変えられる大きな力になりうるのです。だから、何度も言いますけど、走るのが速い遅いは関係ないんです。いかに次の塁を狙う意識を持てるか、が重要なんです。

 コーチという立場になって、改めて色々と自分が大切にしてきたことが明確になりました。今回の台湾、本当に行ってよかった。教えに行った僕が、実はたぶん誰よりも一番、学べたと思っています。

 ありがとうございました。謝謝。

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崇越のみんな、謝謝!