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GIANTS ニュース

2011年12月

チーム

2011.12.30

カリブ便り~最終回:50日間の武者修行を終えて

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 みなさま、ご報告が遅れてしまいましたが、中南米・プエルトリコのウインターリーグに参加していた朝井秀樹(27)、小野淳平(24)、笠原将生(20)、辻内崇伸(24)の4投手と河本育之二軍投手コーチ(44)、そして通訳の私の6人は、今月21日に無事帰国しました。現地での模様を「カリブ便り」として1か月半に渡り報告してまいりましたが、最後の便りとなった第38回がやや唐突な終わり方だったため、今回、遅ればせながら「カリブ便り~最終回」を掲載させていただく運びとなりました。所属したカロリーナ・ジャイアンツの“外国人選手”として、それぞれの持ち味を活かしたピッチングでチームに貢献、一回りも二回りも大きくなって凱旋した4投手と50日間の海外生活を共にした私が、彼ら4人の人間性とプロフェッショナリズムに触れて思ったこと、感じたことを書きつづってみようと思います。

【朝井秀樹 背番号47】

6試合 12回 0勝1敗 先発2試合 防御率7.50 WHIP2.08 被打率.327 奪三振9 与四球9 被安打16 被本塁打2 失点10 自責点10

 初対面の人の警戒を解く親しみやすい風ぼうとひょうきんな仕草、陽気で軽妙な話術。そういったものを駆使し、ふだんからライアル選手やグライシンガー投手など、どちらかと言えば物静かなタイプの外国人選手の心をも開き、和ませてきた朝井投手。そういう姿を間近で見ておりましたので、プエルトリコに来てもチームに簡単に溶け込んでいくのだろうなと思っていましたが、まさにその通りでした。朝井投手の、人の懐に飛び込むタイミングの確かさは、もちろん天賦の才能もあるのでしょうが、チームの仲間たちの心をいとも簡単にとらえられるのは、常にスペイン語会話のガイドブックを持ち歩いて積極的にコミュニケーションを図るといった不断の努力に裏打ちされた成果だということは、お伝えしておかねばならないでしょう。

 朝井投手が人気を博するのは、コミカルな言動や、からかい、からかわれといった、おふざけの面からだけではありません。グラウンドへの一礼を常に欠かさない姿は、日本人の礼節を皆に知らしめ、多くの者からリスペクトさえ勝ち得ていました。

 開幕戦にリリーフ登板したことで、巨人軍投手のプエルトリコ初登板は朝井投手となりました。ロングリリーフも先発もできるということで一時は重宝されましたが、シーズン終盤が近付くにしたがいリリーフ投手陣の層が厚くなり、最後の登板は12月4日。ちなみにこの日は2回を1安打無失点と見事な投球をしました。

 自他共に認める大リーグ通の朝井投手にしてみると、イバン・ロドリゲスを始めとするメジャーの有名選手と何度も対戦して、さぞやテンションも上がったのではないかと思いきや、どんなビッグネームであっても、ひとたび打者として迎えてしまうと、自分の中ではワン・オブ・ゼムに成り下がってしまうものらしいです。まさに1対1の勝負、これぞプロのコメントと言ったところです。また、話術もお手の物の朝井投手であれば、メジャーのスター選手とは、相手として対戦するよりも、触れ合いの機会のほうが望まれるようで、「カグアスに所属するソフトバンクの選手がうらやましいですね。ボクも“パッジ”(イバン・ロドリゲス捕手)に球を受けてもらいたいですわ」と話していたのが印象的でした。

【小野淳平 背番号20】

7試合 35回2/3 2勝3敗 先発7試合 防御率3.53 WHIP1.15 被打率.225 奪三振24 与四球9 被安打30 被本塁打2 失点15 自責点14

 ある支配下登録選手が日本を離れ他国のウインターリーグへ参加するということは、ペナントを争うシーズン終盤の大事な時期に惜しくも一軍戦力になれなかったということをも意味します。プロ入り2年目の今季、一気に2勝を挙げたばかりの小野投手にとって、プエルトリコで野球をするという事実に気持ちの整理をつけるのは容易なことではなかったかもしれません。しかし、本来は生粋のアスリートである小野投手、そういった複雑な心境があったとしても、それもカロリーナ・ジャイアンツのユニフォームに袖を通すまでのことだったに違いありません。彼は本当に、自分の本来の所属先でもないチームのために、常に全身全霊で戦っていました。彼が先発登板するたび、「投手の本能」と言う言葉が私の脳裏に浮かんだものです。

 プエルトリコでの初登板、いきなり初勝利を挙げ、その堂々とした投げっぷりに、カロリーナ・ジャイアンツのフロントや首脳陣がうなったのは記憶に新しいところです。2試合目はピリッとしませんでしたが、続く2試合を好投、自身2勝目も挙げました。

 1番から9番、打線のどこからでも一発が飛び出すパワーの前に、低めに投げる大事さを痛感したと言う小野投手、ある試合で降板させられた際、「こんなピッチングしてちゃ一軍は無理だな、本当に悔しい」と自分を責めることもありましたが、球が浮いてきてしまうなど制球を乱す原因は河本コーチの指摘などで判っているので、欠点の再確認ができたことも収穫のひとつと考えていいのではないでしょうか。とにかく先発で7試合35回以上を投げ、1.15というWHIPを残したのは素晴らしいです。

 2010年オフのオーストラリア、本年のプエルトリコと、小野投手には2年続けてのウインターリーグ派遣となりましたが、レベルはもとより、プエルトリコのほうが真剣に野球に取り組んでいる印象を受けたそうです。負けが込めばピリピリした空気が支配するし、勝ったときの喜び方もすごい、と感じたようなのですが、そういう真剣な雰囲気に自分も立派に同化していたことに小野投手は気付いていたでしょうか。

【辻内崇伸 背番号23】

5試合 4回1/3 0勝1敗 先発0試合 防御率2.08 WHIP0.92 被打率.133 奪三振2 与四球2 被安打2 被本塁打0 失点1 自責点1

 今回、縁があってプエルトリコ組として同行させてもらうことになるまで、私は辻内投手とはまともに言葉を交わしたことはありませんでした。チームの通訳という職種から、外国人選手と親しくする日本人選手でないと、あまり接する機会がないのです。そう、辻内投手が外国人選手とからむことは、日本では、少なくとも私を介しては一度もありませんでした。そんなことから、外国語や外国人が苦手なのかなと思い、プエルトリコのチームに溶け込ませるのには、彼が一番“厄介”かな、と考えていました。

 ネット上など日本の一部の野球ファンの間では、巨人軍・辻内投手というのは、“ロマン”を感じさせる選手らしいですね。辻内待望論は根強くあるようです。確かに、そばにいてやきもきすることもありますが、いつしか気になる存在として意識させられるようになり、何とも不思議な存在感のある選手だなと思うようになりました。

 チームに溶け込めるかな、という心配も、積極的に自分からというのはあまり見受けられませんでしたが、何と言っても朝井投手がお笑いのネタにするものですから、帰国間際には誰もが辻内投手のことを“ゴールドエッグ”と呼び、かなりの人気者となっておりました。このニックネームは、言わずと知れた「金の卵」の朝井流の翻訳です。

 4人の中では登板試合数も回数も一番少なかったのですが、サヨナラ安打を打たれたときの1試合以外は、打点はおろかヒットも許しておらず、防御率もWHIPも見事な数字を残しました。朝井投手の盛り上げもあったのですが、12月3日の、ほぼ20日ぶりの登板で三者凡退の好投を見せたときは、ブルペンやベンチは大いにわきました。見守るこちらにも熱いものが込み上げましたし、ロサド投手コーチなどは、「長いブランクをものともしないナイス・ピッチング。脱帽するよ」と敬意を表していました。

 辻内投手が薫陶を受けたと言うロサド投手コーチの言葉と指導。そのたまものであるチェンジアップを引っ下げ、2012年は充実のキャンプを過ごし、開幕ロースター入りに名乗りを上げて欲しいと痛切に願います。辻内投手、わざわざプエルトリコまで来てしまう息子思いのご両親を早く東京ドームに招待してあげましょう。

【笠原将生 背番号28】

7試合 29回1/3 1勝2敗 先発7試合 防御率4.60 WHIP1.19 被打率.236 奪三振24 与四球10 被安打25 被本塁打2 失点17 自責点15

 プロ入り3年目、弱冠二十歳、文字通りの若武者。海外での野球は初めてなのかなと思っていましたが、2010年オフに台湾で開催されたインターコンチ杯に日本代表として参加しています。今回はひとりグループ最年少ということで、先輩3選手に気を使う毎日だったかもしれません。実際、最年長の朝井投手などが、長幼の序、つまり先輩・後輩の概念というものを、それを全く知らない外国人に教えるときのサンプルに使われたりしていました。もちろんそれは、チームの仲間を和ませる朝井投手流のエンターテイメントのひとつであり、こういった「笑い」がチームと日本人軍団の潤滑油になっていたことは確かで、笠原投手も「可哀相な後輩」の役を演じきっていました。

 また、私にしてみれば息子と言ってもおかしくない年齢の笠原投手、50日間も接していれば、なんだか子供だなあ、とため息も出る場面もありました。でも、やはりそこは歴としたプロ野球選手、ユニフォームを着てマウンドへ向かうときはひとかどの戦士の顔をしており、人様の息子さんながら誇らしく思う気持ちが芽生えてくるのを私は抑えることができませんでした。

 ローテーション2番手投手として、ホーム開幕戦で初登板。黒星発進ながらも、先発2戦目には8連続三振を奪うなど調子を上げ、3戦目では勝ち星はつかなかったものの5回を無失点、プエルトリコ登板4試合目にして初勝利を挙げました。このときの模様は「カリブ便り~第17回」にも記しましたが、自分と同い年の若いセンターのF選手とは言葉を越えた友情を築いていたようで、心温まるシーンに多く立ち会えました。

 プエルトリコにおけるラスト2試合の登板が、早い回での交代ということになってしまい、若干、尻すぼみの印象はぬぐいきれませんが、「結果」はともあれ「内容」に自信を持って良いのは、1.19というWHIPの数値もそれを示しています。河本コーチと二人三脚でフォームの微調整にも取り組み、「球筋は良くなっているぞ」と太鼓判を押されましたし、「メンタル面を強化し、テクニックにもさらにみがきをかけて、早く一軍の切符をつかんでくれ」と、カロリーナ・ジャイアンツ監督のロドリゲス氏にも言葉をかけられていました。元大リーグ監督のきゅう覚にも、この若者の伸びしろがにおうのでしょう。

 到着したときは全くしゃべれなかった英語も、いよいよプエルトリコを去ろうかというころには、アメリカ人投手などと積極的に英会話に取り組むなどかなり上達し、野球以外の面での向上心も見えました。

【終わりに】

 今回の4人、そして河本コーチ。彼らがカロリーナ・ジャイアンツに加入したことでチーム内に融和が生まれたのは明らかです。ロドリゲス監督の言っていた、チーム強化に欠かせない“化学反応”というものは確実に引き起こされました。「来シーズンもこの4人に来てもらいたい」というレブロンGMの言葉がうれしい限りなのですが、ウインターリーグ参加というのは、日本の選手にしてみれば言わば通過点。そこを踏み台にしてさらなる高みへ昇らねばならぬのですから、巨人軍として来季のプエルトリコ派遣があったとしても、今回の4人は、新しいメンバーにアドバイスを送る立場でなくてはならないでしょう。

(読売巨人軍国際部 早坂信博)