クリケットのクセ修正に苦しむ!

 みなさんアユボワーン(こんにちは)! いよいよ子どもたちへの野球指導が始まります。今回の指導日程では、各都市でベースボールキャンプという野球教室を開催し、都市周辺のカレッジ(学校)の野球チームを集めて指導します。

基本の投げ方を指導

 この日は滞在中のゴールの「リッチモンドカレッジ」という学校で指導します。ランニング、体操を行い、まずはキャッチボールから。  スリランカではクリケットが盛んなため、ほとんどの人が腕を伸ばしたままで投げてしまう「クリケット投げ」でした。事前にJICA隊員からも、「肩・ひじのけがが多く、けがをしにくい投げ方を教えてほしい」とリクエストをいただいていたので、子どもたちの投げ方を見て原因がわかりました。キャッチボールの指導の前に、サッカーのスローイングのような両手投げをさせたり、ひじ、手首の使い方などを説明し、正しい腕の使い方を指導しました。日本での幼児指導で行っている、腰を回すことを意識させる「クルッとスロー」もやってみると、投げ方が良くなっていきました。

バッティング練習ではトスをしながら声かけ

 「投げ」の練習を終えて、バッテリーはピッチング練習へ。やはりピッチャーも上半身だけで投げていて下半身がうまく使えていないようでした。体重移動やリズムを意識した投げ方の練習を行い、「下半身主導で投げるんだよ」と伝えてもなかなかできないようで、今までの形を修正するには時間がかかりそうです。  また、JICA隊員の方々は「バッテリーのレベルアップがスリランカ野球のレベルアップにつながる」と感じているそうです。昨日見た試合でも、盗塁されてもキャッチャーが送球しない場面をよく見ました。  一日の指導時間では、スローイングまで指導ができなかったので、日頃指導をしている方々に指導方法を伝え、今後の練習に取り組んでもらうことにしました。  バッテリーがピッチング練習をしている間、内外野手はノックを受けていました。グラウンドがデコボコなので、きれいな姿勢での捕球は難しく、打球を捕ることに必死。次のステップのことまで考える余裕がないため指導には苦戦しました。フライキャッチに関しては、クリケットでフライを捕ることがあるので、みんな上手でした。  ピッチングとノックが終わると、みんなでロングティー、シャトルバッティング、守備の3種目をローテーションで行いました。バッティングでもクリケットの影響が……。下からすくい上げるように打ったり、前の足を引きながら打ってしまいます。テイクバックや体重移動の練習などを行おうと思ったのですが子どもたちには難しいと考え、「野球とクリケットでは打ち方が変わるんだよ」「野球でボールを打つ時は足はあまり動かさないんだよ」という2点を伝えました。

子どもとの真剣勝負ではカッコイイ姿を見せました

 指導の最後には、僕がピッチャーとバッターの両方を務め、子どもとの真剣勝負を行いました。ピッチャーでは、「高校までエースだった」という昔の自分を思い出しながら投げ込みました。その結果、対戦した5人とも三振に仕留めました♪  バッターでは、ヒット性の打球を打つことができ、少しはレベルの高い野球を感じてもらえたかなと思います。子どもたちには「もっとうまくなりたい」「北之園コーチのように三振をとりたい」と感じてもらいたい、更に高いレベルを目指してほしいという思いから真剣勝負をさせてもらいました。みんなにとって忘れられない1日になってくれたらうれしいです。

ユニホームをプレゼント

 初めての指導を終えて、あまり思い通りに動いてもらえなかったり、通訳されながらの指導で進行するのが難しいと感じました。また、道具も少なく出来る事も限られているという現地の環境を知り、何度も日本の野球環境がいかに充実しているかを実感しました。  指導後は、前日も視察した野球大会の決勝戦を見に行きました。スリランカ人はセレモニーが好きなようで、試合開始前はプロ野球のように一人ひとり名前を呼び、整列し始球式までありました。スケジュールの関係上、最後まで試合を見られませんでしたが、スリランカ野球のレベルを知ることはできました。  観戦後はコロンボまで2時間移動。僕は疲れ果てて爆睡していましたzzz。  今夜もJICA隊員の方たちと食事へ。スリランカの歴史や今の情勢、これからのスリランカ野球で必要なことは何かということを話しました。いつ紛争が起きてもわからない現状を聞きましたが、「宗教が違う」という理由だけで殺し合いになってしまうそうです。野球だけではなくさまざまな話が聞けて、今こうして生きているだけでも幸せなことなんだと感じました。  あすはキャンディという都市に移動し、午後から指導です。どんな子どもたちに会えるか楽しみです。  北之園コーチのプロフィルはこちらから。

練習に参加してくれた子どもたちと記念撮影