発育発達の特性/育成サイクル/思考と行動の自立

発育発達の特性

【フォーカスするのは選手の将来】

人の成長速度はバラバラです。「生物学年齢≠暦年齢」でありながら、日本スポーツ界では目先の勝利や結果を求めるあまり、身体に過度な負荷をかける練習、それが要因のケガに伴う競技離脱といった事例がジュニア世代から見られます。 成長が早い、いわゆる「早熟」の子が神童ともてはやされその世代で活躍できたとしても、すべての世代のトップでいられるとは限りません。逆に、成熟に伴いパフォーマンスは向上するので、成長の遅い「晩熟」の選手をジュニアの段階で見限ることがあってはいけません。

全ては選手が生涯において理想とする姿から逆算する、長期的な視点を忘れてはいけません。そして、個別化したアプローチから個々の持つ潜在力を100%引き出し、トップ選手の養成を目指します。

【発育発達の段階の見極め】

そのために必要なのが発育発達の段階とその特性の把握です。 一般的に男子は12~13歳でPHA(Peak Height velocity Age=身長の伸び率がピークとなる年齢)を迎えるとされます。(参照:「身長成長速度曲線のパターンによる成長期の区分」)

といったプログラムに取り組んでいくことが必要です。 (参照) ●身長成長速度曲線のパターンによる成長期の区分 ―村田光範(1993)Ⅱ-2 ジュニア期のトレーニングにおける骨年齢評価および身長成長速度曲線解析の意義. 財団法人 日本体育協会,平成5年度 日本体育協会スポーツ医・科学研究報告 No.V ジュニア期の体力トレーニングに関する研究-第2報-,p.10

【定期的な身体測定・フィジカル測定】

ジャイアンツ U15 ジュニアユースでは、phaseⅠ~Ⅳの見極めのために、年に3~4回、定期的に身体測定(身長、体重、座高など)を実施します。 またフィジカル測定(遠投力、塁間走・持久走タイム、打球速、柔軟性など)も同様に実施し、成長の記録化と個々の目標設定の指標として活用していきます。

育成サイクル

【育成のAOACサイクル】

発育発達の特性を踏まえ、具体的な手順をまとめたものが下記の「育成のAOACサイクル」です。

選手がそれぞれの現在地を理解し、新たな目標設定と具体的な取り組みに移れるよう、指導者はヒントやきっかけを与えるに留まります。主体はあくまで選手で、指導者は、選手の自立を促す伴走者として寄り添います。

思考と行動の自立

【セルフコーチングができる自立した選手へ】

体の成長とともに、こころの成長も著しいのがジュニアユース世代です。思春期では親から自立したいという欲求が高まりますが、その一方では親から離れることへの不安も同時に抱きます。不安への対応から、仲間を作り一緒に行動することで安心感を得ます。不安と自立の往復を繰り返し、最終的に自立した行動がとれるようになります。

ジャイアンツ U15 ジュニアユースでは、野球という競技の特性を上手に活用しながら「思考と行動の自立」を促し、セルフコーチングができる選手を目指します。 保護者によるサポートを最小限にとどめ活動するのも、子どもの自立化を促すための取り組みの一環です。また育成の「AOACサイクル」で示した思考の主体は選手自身というのも、同様の考えからです。 実際の活動でも、指導者は選手が練習の意図や目的を理解し取り組めるよう丁寧な説明を心掛け、逆に理解できない部分は選手が質問し、理解した上で取り組む関係性を構築していきます。 思考を整理する習慣、思考を言葉に変える力を養うことは、野球脳の強化にもつながります。具体的には、試合での状況分析力を磨くこと、緊張する場面での一瞬の判断力を磨くことなどです。 こうした循環・連携から、最終的に「セルフコーチングができる、自立した選手」の育成を目指します。